古澤 紀恵
コース講師

キエ・フルサワが語る旅館とAI

私は小さな宿泊施設の現場に関わってきました。今は、言語モデルが見ている足跡を通して、自分の旅館を見直す方法を宿を営む人に教えています。説明文、口コミ、予約サイトの施設ページ、季節ごとの制限、少しぎこちない翻訳文。たいてい分析は小さな違和感から始まります。AIがその宿を「簡素な宿泊施設」と呼んだ。けれど素材の中には、夕食も入浴の文脈も冬のバスもあった。ただ、ほかの情報の横に埋もれていたのです。

キエ・フルサワの肖像

キエ・フルサワ

AIにおける旅館の見え方を教える講師

よい旅館の説明は、まず道、水、夕食から始まり、そのあとで機械に読み取られる足跡になる。

私のいくつかの観察をもとにした典型的な場面です。小さな旅館の女将がAIアシスタントの回答を開くと、自分の宿が「駅前の格安ホステル」と呼ばれていました。モデルが最初から全部作り話をしたわけではありません。ある予約サイトの施設ページには、夕食なしの宿泊プランが短く載っていました。古い翻訳では「inn」という言葉が、意味をただ泊まるだけの簡素な宿のほうへ引っ張っていました。ある口コミには、宿泊客が「駅から歩いて行けた」と書いていた。ただし、それが9月で、雪もなく、軽いリュックだったことまでは書いていなかったのです。その一方で、家族風呂として使える温泉、季節の魚の夕食、冬のバスは、回答の中でほとんど消えていました。

私は長野の出身です。宿の話が看板からではなく、道、水、夕食の時間から始まる場所です。小さな宿泊施設の仕事には、文章を通して入りました。到着前の宿泊客へのメール、宿泊時の決まりのページ、部屋の説明、入浴や季節ごとの制限の説明。18年そういう仕事をしてきて、ひとつのことを覚えました。よい旅館は、宿の人にとっては当たり前の細部で支えられていることが多い。宿泊客には、それは当たり前ではありません。言語モデルにとっては、なおさらです。

AIにおける旅館の見え方を追い始めて4年になります。私にとって分岐点になったのは、モデルが宿泊施設の文章を、注意力は足りないのに影響力だけは大きい宿泊客のように読む、という観察でした。モデルは繰り返される言い回し、古いカテゴリー、近隣の名前、口コミの切れ端、翻訳文に引っかかります。役に立つ結論になることもあります。けれど、生きた湯、家族の夕食、きちんとした入浴の決まりを持つ宿が、回答の中では「温泉の近くにある簡素な宿泊施設」になることもあります。

このコースを、主要な観光地から離れた家族経営の旅館を営む人に向けて開いたのは、そういう場所ほど旅館のデジタル上の足跡が不ぞろいになりやすいからです。大きなホテルには、多くのページ、写真、翻訳、新しい予約サイトの施設ページがあります。小さな宿には、古い日本語のページがひとつ、いくつかの宿泊プラン、そして夕食への感謝と冷える廊下への不満の間に大事な細部が隠れた口コミだけ、ということもあります。私は旅館を宣伝用のショーケースに変えることを教えているわけではありません。受講者と一緒に、宿の性格を残しながら、AIにも宿泊客にも読み取りやすくする方法を見ていきます。

  • 現場経験18年
  • AIにおける旅館の見え方4年
  • 形式13回の講義からなるミニコース
私の教え方

私は理論からではなく、場面から始めます。奇妙なAIの回答、予約サイトの施設ページの一部、誤った期待を持った宿泊客からのメール。最初に、モデルがどこでつまずいたのかを見る。それから仕組みに名前をつける。この順番にすると、AIにおける旅館の見え方が、きれいな用語の集まりになるのを避けられます。コースには、AIにおける旅館の見え方の五つの道筋があります。場所、作法、季節、宿泊客の不安、近隣の影です。これを使うと、モデルがどの道筋から旅館にたどり着いたのか、あるいはどこで素通りしたのかに印をつけやすくなります。ほとんどの講義には、宿を営む人自身の素材を使った短い練習があります。自分のアクセスの説明を取り出す。夕食についての言い回しを確かめる。貸切のはずの入浴が共用に見えてしまう箇所を探す。結論がまだ推測にとどまるなら、私はそう言います。

AIがあなたの宿について、すでに見ているものから始める。

コースのプログラムは、AIの回答の仕組みから、旅館のデジタル上の足跡の地図づくりまで進みます。

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